大人になってからの勉強は本当に楽しい。きっとそれは受動的ではなく能動的だから。
どうもヨッシー店長です。
先日、大正大学内で行われた『第1回日本ダウン症会議』というイベントに参加してきました。
※「日本ダウン症会議とは?」「日本ダウン症会議ではどんなことが行われるのか?」「なぜ日本ダウン症会議に参加するのか?」などの事前情報は、「ダウン症の最新情報を学ぶため「第1回日本ダウン症会議」に参加してきます!」という記事を参照下さい。
今回は「日本ダウン症会議に参加した感想、学んだこと」をレポートとしてまとめてみました。
ダウン症児の親として改めて気付いたこと、現在のダウン症を取り巻く環境、今後の課題など色々と見える部分がありました。
今回の記事が何かの参考になれば幸いです。
※今回の記事内容でくみ取っている内容は、各先生、各関係者さんたちの意見を”自分なり”にまとめたものです。内容を”断定”しているわけではありません。あらかじめご了承下さい。
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日本ダウン症会議に参加した感想
日本ダウン症会議は2日間の日程で行われ、
- 1日目 オープニング、特別講演、分化会、交流会
- 2日目 分化会、市民公開講座
という流れで行われました。
オープニング
オープニングは、『LOVE JUNX(ダウン症のある方のための世界で初めての本格的なエンタテイメントスクール)』によるダンスパフォーマンスと歌があったのですが、LOVE JUNXのダンスはかなり凄かったです。
「ダウン症の人でもあんなにキレのあるダンスができるんだな、凄い!」と終始圧倒されました。
特別講演
特別講演は、岸田ひろ実さんによる講演でした。
『私たち親子にとっての新しい形 ~ダウン症のある息子と、車椅子の私の生活~』と題して、ダウン症の息子さんの話、旦那さんが亡くなってから思ったこと、車椅子生活になってから見えたものの話をしてくれました。
以下は自分がメモった部分をピックアップしてみました。
- ダウン症の息子に周りの人たちと一緒にいるために徹底させたことは「挨拶」「ルールを守ること」「清潔にすること」
- ダウン症の息子が働き始めて困ったのは「学校と作業所の区別ができない」こと。やがてひきこもりになった。しかし、「自分の言う事がわかってくれる環境」になると、毎日でも働きたいと言うように。
- ダウン症の息子が教えてくれたこと『人と違っていい』ということ。
- 夫が亡くなってから気付いたこと「いつ言えなくなるかわからない(人はいつ死ぬかわからない)」「先延ばしにすると後悔する(日頃の感謝など)」
- だから家族間で『ありがとう』『ごめんなさい』を毎日言うルールにした。
- 『バリアバリュー』つまり障害を価値に変えていきたい。
- バリアフリーのある飲食店は全国で4.8%、多目的トイレのある飲食店は1%
- ハード(設備)は変えられなくても、ハート(サービス)は変えられる、ユニバーサルマナー(さりげない配慮)が大事
- 障害のある人に声を掛ける時は『お手伝いできることはありますか?』と言って下さい。
うちの優にも「挨拶」「ルールを守ること」「清潔にすること」は教えてますが、まだ不十分なところもあるので、もう少し意識したいなーと思いました。
自分は「就労すればなんとなく一段落する」と勝手に思っていましたが、僕ら同様、「人生は働き始めてからの方が長い」と改めて思いました。
『バリアバリュー』の考え方は自分も賛成で、「現在の価値観から180度変わるくらいの価値が持てたらいいな」と思っています。
バリアフリーの話は飲食店が例にあがっていたこともあり、当事者(カフェオーナー)としては改めて気付かされる部分がありました。
うちの店は車椅子のお客さんも来店したことがありますが、入り口に段差があるので、「一人で気軽に来店」することはできないです。
もちろん来店されれば、スタッフがお手伝いして室内に入店することは可能ですが、“一人で気軽に”というところまでは考えていなかったです…。
今回の岸田ひろ実さんの話で、「まだまだ自分は多角的に見ていない部分は多いのだな」と思いました。
分科会1日目
分科会は、それぞれ違ったテーマ、違う会場で行われた講演会です。
1日目は「医療1」「就労」「教育1」「福祉1」と4種類の講義が行われたのですが、自分は「就労」の講義に参加しました。
「就労」を選択した理由は、自分がまだこの分野の知識が乏しいのと、自分は経営者なので「何かできることはあるのだろうか?」と思ったからです。
ちなみに『各分科の行き来は自由です』ということになっていましたが、座席の性質上、途中退席することはほぼ不可能でした。
なので1種類の分科しか見れないのが実状でした。
※これに関しては改善案として日本ダウン症協会に提案済みです。
分科会2日目
分科会2日目は、「教育2」「保育」「医療2」「福祉2」の4種類の講義がありました。
自分は「医療2」を選択しました。
※医療2では、甲状腺機能低下症や肥満、整形外科疾患、眼科疾患などの説明が行われました。
参加理由は、「児童期から成人になるまでに、どのような病気や怪我に注意すればいいかを知りたかった」からです。
市民公開講座
2日目午前の分科会の後は、午後から「市民公開講座」というものが行われました。
こちらは入場無料で、沢山の方が参加されてました。
オープニングは、横浜ダウン症児サークル「ハマヒアポ」による『オハナフラ(フラダンス)』が披露されました。
その後は市民公開講座のメインとなるシンポジウムへ。
今回のテーマは『出生前検査(診断)をめぐって』と題して、出生前検査に関しての各先生、関係者さんがお話をしてくれました。
どの話もご自身の体験をもとに話をして頂き、とても為になる講義でした。
シンポジウムの締めは、”ダウン症のイケメン”こと「あべ けん太」さんによるお話でした。
あべけん太さんは自分の考えていることをしっかり自分の言葉で喋っていて(聞き取れないことはほぼなかった)、しかも時折ギャグも交えながら会場の皆さんを笑わせていました。
そんなあべけん太さんを見ていて、「うちの優もこんな感じでしっかり喋れるような大人になったらいいなー」と思いました(^-^*)
ということで、2日間にわたって行われた日本ダウン症会議の感想は以上になります。
全体的な感想としては、「学びたいことはまだまだあったけど、参加できて良かった」と思いました。
日本ダウン症会議で学んだ事
次に、日本ダウン症会議で実際に学んだ事をまとめてみたいと思います。
就労
以下は「就労」の分科で自分がメモった部分をピックアップしてみました。
- 就労先の選択肢は少ないのが現状
- 小学生時は親離れ、中学生時は様々な体験活動をした方が良いと思われる
- 就労することに発語不十分なことは関係ない
- 現在は福祉環境が充実してきているので、12年前に比べると親が一般就労させる意識が薄らいでいる
- 就労後に仕事がマンネリ化する場合があり、課題になっている
- 本人には「相談・説明・納得」してもらうことが大事
- ダウン症の人は細かい仕事が得意な人が多い
- 現在の障碍者法定雇用率は2.0%だが、障碍者雇用を進めている企業はまだまだ少ない
- 障碍者が働いた”実績”を作ることによって、企業も採用に向けて動きやすくなる
- 大学生ボランティアは福祉の大学にお願いすると来てくれる可能性が高いので、協力者が必要な場合は問い合わせてみるのも良い
- 高校生時にやっておいた方がいいことは、「障害があるなし関係なく、大人たちと対等な関係を築く」「しっかり挨拶ができるようにする」「働く(お金を稼ぐ)ということはどういうことかを理解させておく」ということ
自分が一番思ったのは「やはりまだまだ就労環境は整っていないんだな」ということでした。
もちろん20年前に比べたらかなり進んだとは思うのですが…。
この就労の講義には、現在障碍者を雇用している企業の人が実際に来て「現状はどのような仕事をしているのか」を説明してくれました。(今回は2社参加)
仕事内容は、掃除や販売補佐がメインでした。
上記のメモしたポイントで「就労後に仕事がマンネリ化する場合がある」という項目がありますが、たしかに一定の仕事だけの場合は飽きてしまう可能性もあるのかなと少し思いました。(もちろん同じ仕事でも飽きずに行える障碍者の人もいるとは思います)
もし可能であるのであれば、マンネリ化を感じてしまう障碍者の人がいたら、企業内で違う部署への移り変わりができるといいですよね。
それでその人の適性が見られたら、しばらくその部署で働いてもらうとか…。
まあこれができるのは、様々な部署がある大企業などに限られてしまうかと思いますが…。
ちなみにまだ体制が整っていないので大きな声では言えませんが、「カフェガパオでも将来的には障碍者の人が働けるようになったらいいなー」と思っています。
自分が知る限りでは、ダウン症の皆さんは笑顔が素敵なので、接客業に向いている気がするんですよね。。
もし優がうちの店で働き始めるようなことになれば”実績”もできるので、他の障碍者の人も働きやすい環境になるかもしれません。
医療2
以下は「医療2」の分科で自分がメモった部分をピックアップしてみました。
- ダウン症の人に眼科・耳鼻科は重要だと思われる
- ダウン症の合併症の一つの「てんかん」は、倒れるようなてんかんではなく1、2秒気絶するてんかんの場合が多い
- 学童期~就労期は医療から離れる場合が多いので、この期間も注意深く見守ることも大事
- 米国で作っている『ダウン症児の健康管理ガイドライン』はあくまでも参考までに
- 1~5歳期の血清脂質が高い場合、母親が甘いものを食べすぎてそれが母乳として与えられる可能性もある
- ダウン症の人が発達障害にならないとはいえないので、何でもダウン症のせいにしないように
- 体質改善(肥満など)する場合は、家族とのコミュニケーションがしっかりとれているとスムーズに体質改善へ移行しやすい
- 低年齢から発達障害に注意する(自閉症スペクトラム症への注意)
- 年齢相応の対応が大事
- 生活習慣病は親の体質が土台になっている
- 頑張りすぎないことが大事
- 外販偏平足は、かかと側から見ると指が見える
- 外販偏平足には程度がある(Ⅰ度~Ⅲ度)
- ダウン症児の足の発達は改善しにくい
- つま先だけ曲がる靴は良い(アシックス、ニューバランスなどである)
- 短下肢装具で足首の発達を改善できる
- マット運動で頭を前に倒す運動(前回りなど)は、脊髄神経を圧迫する可能性があるので控えた方がいい
- トランポリンは6歳未満の場合はダウン症合併症の有無に関わらず避けた方がいい
- ヒトの視覚は8歳までに完成、この期間に視覚に阻害が起きるのが「弱視」
- 弱視が起きる原因としては、「形態覚遮断」「斜視」「屈折異常(遠視・乱視・近視)」などがある
- 弱視の治療の基本は、屈折矯正、つまり「適切な眼鏡」を使用すること
- 健常児は6歳で視力1.0に達するが、ダウン症児は13歳頃までかかる可能性がある
- ダウン症児は眼鏡を必要とする屈折異常は約90%に達する
- 「階段を怖がる」「ボールキャッチができない」などの場合は、ものを3Dで見れていない可能性があり、斜視の可能性がある
※「医療2」に関しては情報が多いので、今度別の記事にて詳細をまとめたいと思います。
講義を聴いてて思ったのが、「元気で健康に見えても気は抜けないんだなー」ということ。
自分も完全にダウン症のせいばかりにはしていないですが、発達障害があってもおかしくないことを理解しました。
ただ専門医でもない限り、これらを見極めるのは難しいかもしれないですね。
あと、『ダウン症児は眼鏡を必要とする屈折異常は約90%に達する』というのは結構驚きで、「え!そんなに割合高いの!?」と思いました。
うちの優は今のところ眼鏡はかけていないですが、もしかしたらこの先眼鏡をかけるようになるかもしれませんね…。
ちなみに優の足を確認したところ、外販偏平足(かかと側から見ると指が見える)ではなさそうですが、偏平足ではあるようです。
出生前検査をめぐって
以下は市民公開講座の「出生前検査をめぐって」で自分がメモった部分をピックアップしてみました。
- 既に受精卵などの時点で「命の選別」は常に行われている
- NIPT(出生前検査)ができるようになってから、この2年間で検査数が増加している
- 医療関係者は患者に正確な情報を伝えることが大事
- どんな時でも決断するのは両親であるべき
- 出生前検査はスクリーニング検査と誤解される可能性がある
- 出生前検査でわかることはごく一部
- 母親はただでさえ不安が多いので、夫や周りのサポートは大事
- 「ダウン症児を生んでもなんとかなる」という想いを、出生前検査希望の両親には伝わりにくい(現在の課題になっている)
- 日本の新生児医療は世界最高レベル
- 胎児も病気をする『The Fetus as a Patient(胎児も患者として医療の対象とすべき)』という考えがある
- 日本では実は出生前検査は少なく、全体の2%程度
- あべけん太さんは、常に新しいことに挑戦している(今度は英語を覚え、世界にダウン症の友達を増やすとのこと)
産婦人科医の先生いわく、「『出生前検査は命の選別を行っている!』と言われることもありますが、実は体外受精などでは常に”命の選別”は行われています」とのことでした。
これは具体的にいうと、体外受精を行う場合、受精卵は3~5個くらいは常に用意され、その中から一番細胞活動が活発な受精卵を子宮に戻すそうです。
つまり、受精卵3~5個の中から”選ぶ”ということが”命の選別”につながっているとの事でした。
これを聴いて自分は「何をもって”命の選別”と呼ぶのだろうか…」と自問自答しました。
“良い”精子や卵子を選ぶところから?
“良い”受精卵を選ぶところから?
出生前検査で障害の有無の可能性を調べること?
答えは出ませんでした…。
自分には判断基準は見つけられませんでした。
わかることは、「医療技術が進めば進むほどこのような問題は様々出てくる」ということですね。
シンポジウムの2番目に話された助産師の先生は、「”ダウン症児を生んでもなんとかなる”という想いを、出生前検査希望の両親には伝わりにくい、そこが今の課題」と言われていました。
これは確かに難しい課題ですよね…。
もし自分にまだ子供がおらず、その道のエキスパートの先生に『ダウン症児を生んでもなんとかなりますよ』と言われたところで、100%鵜呑みにすることは不可能だと思います。
近親者や友達などにダウン症の人がいれば、その考え方も変わると思いますが、それでもきっと悩むと思います。
ちなみに自分は出生前検査自体は否定も肯定もしません。それぞれの両親の考えだと思っています。
助産師の先生が言われている課題を「問い」として考えた場合、
自分なりに考えてみましたが、これに関しては少し答えが出つつあります。
それは、「実績を作る」ということ。
ダウン症の人・及び障碍のある人たちが”人生を楽しんでいる”ということが世間で周知されれば、出生前検査希望の両親に少しは届くかもしれません。
あべけん太さんのように障碍者本人から『私は毎日幸せです!』と言う人が増えていくのが、遠回りのようで近道のような気もしています。
自分がブログで優の成長記録を発信し続けているのも、この部分と重なりますね。
時間はかかると思いますが「ダウン症の人、及び障碍者が居て当たり前の社会」になっていけば、現在の価値観とは変わるように思っています。
まとめ
ということで、「日本ダウン症会議に参加した感想、学んだこと」をレポートとしてまとめてみました。
今回の日本ダウン症会議では、改めて学べること・考えさせられることが沢山ありました。
正直なところ「もっと学びたい!」というところもありましたが(^-^;)、きっと学ぶ方法は他にもあると思うので、今後も各方面にアンテナを張りながら勉強の機会を増やしていこうと思います。
日本ダウン症会議の次回開催は、まだ正式決定はしていないものの、2年後を目標に『第2回日本ダウン症会議』の開催を目指しているそうです。
その時は是非また参加したいと思っています。
前述しましたが、「カフェオーナーである自分が出来ること」が結構ありそうなので、今後徐々にアクションを起こしていきたいと思います(^-^)
長文最後までありがとうございました。