突然ですが、『ゴーストレストラン』ってご存知でしょうか?
以下、ゴーストレストランの簡単な説明です。
ゴーストレストランとは、実店舗を持たず、オンラインデリバリーのみで注文を受け付けサービスを展開するレストランのこと。無店舗型のレストラン。「クラウドキッチン」とも呼ばれる。
ゴーストレストランは、店舗やテーブルと椅子、フロアスタッフ、配達網を持たない。キッチンは必要だが、キッチンも自前で所有せずに間借りしたシェアキッチンで調理を行うケースもある。注文や配達をUberEatsをはじめとしたオンラインのフードデリバリーサービスを利用して補い、調理を中心とした最低限のコストで運営される。ニューヨークを中心に広まった。
従来のフードデリバリー店と異なり、基本的には客が来訪する店舗が存在しない。店舗物件のイニシャルコスト、家賃や店舗スタッフの固定費を大きく抑制し、リスクを小さくして飲食業を展開できるメリットがある。
フードデリバリーサービスとシェアキッチンといったシェアリングエコノミーの拡大と普及が、ゴーストレストランの台頭と成長を支えている。
引用 – シマウマ用語集
もっと簡単に書くと、「借りた厨房で運営する、飲食デリバリー専門店」ということですね。
配達は『UberEats(フードデリバリーサービス)』などに任せるため、基本的に自分がやることは「食事を作るだけ」になります。(※厳密には作るだけではないのですが…)
店舗が無いので、ホール業務(接客や店内清掃など)もありません。
決済もタブレット端末を使って、ネット上で完結出来ます。
2019年、飲食業界ではこの『ゴーストレストラン』という用語が話題になりました。
「飲食業の新しいビジネスモデル」という事で。
ゴーストレストランには、メリット・デメリットがありますが、自分が考える”それぞれの一番”は…
- 一番のメリット…初期投資(開業資金)が「格安」で済む。
- 一番のデメリット…一般的な飲食店に比べ、経営難易度は高い。
です。
これは一体どういうことか…?
今回はこの
「ゴーストレストランのメリット・デメリット」
を考えてきたいと思います。
今後、ゴーストレストランを開業したいと思っている方に、少しでもお役に立てば幸いです。
ゴーストレストランのメリット
開業費用が格安
このブログの「個人飲食店の開業資金ってどれくらい?儲かるの?気になるお金のあれこれ」という記事でも書いていますが、個人飲食店を開業する場合、開業資金(店舗取得費、内装工事費、雑用費、求人広告費など)は、概ね300~1000万円かかるのが一般的です。
しかしゴーストレストランの場合、どこかの飲食店を間借り(利用していない時間に借りる)するか、シェアキッチンと呼ばれる共同スペースで開業することになるので、一般的な飲食店の開業費に比べると、「格安で開業できる」といえます。
内装や食器などの見栄えを気にする必要は無いですし、店内家具やレジなども必要ありません。
これは「ゴーストレストラン最大のメリット」ともいえるでしょう。
一般的な飲食店よりも経費削減が可能
一般的な飲食店の場合、売上の主な内訳は、
- 食材費…30%
- 人件費…40%
- 家賃…10%
- 光熱費…5%
- 雑用費…5%
- 利益…10%
といった感じです。
これがゴーストレストランの場合、
- 食材費…30%
- 人件費…20%
- 家賃…5%
- 光熱費…3%
- 雑用費…2%
- 利益…10%
といった具合です。
※太字が下がっている経費。
ホール(接客)が無いので、その分「人件費が削減」できます。
昨今の人手不足を考えると、この部分は大きなメリットといえるでしょう。
ゴーストレストランの場合、駅前の一等地や、入店しやすい1階部分に店舗を構える必要が無いため、「家賃は相対的に低く抑えることが可能」です。
通常2階以上の家賃は、1階に比べると安くなります。
夏場や冬場のエアコンによる光熱費も抑えられますし、トイレや家具も無いので消耗品や修繕費なども抑えられます。
ここまで見ると、『ゴーストレストランなら、めっちゃ経費抑えられるやん!』と思われるかもしれません。
が、そう甘くもありません(^-^;)
ゴーストレストランの場合、「別の経費」がかかってきます。
下記の「ゴーストレストランの経費」を見てもらうと、実は30%分が足りていません。
- 食材費…30%
- 人件費…20%
- 家賃…5%
- 光熱費…3%
- 雑用費…2%
- 利益…10%
- ????…30%
この30%分は、「プラットフォーム利用料(受注システム料、配達料など)」となります。
※出店するプラットフォームによってバラつきがありますが、概ねの平均値を30%にしています。
料理を作ることだけに集中できる
ゴーストレストランの場合、接客や配達業務が無いため、営業中は「料理を作ることだけに集中」できます。(オーダー受注、配達員への商品渡しは別)
他の業務に時間を取られないため、効率良く業務(料理)が行えます。
ですので、「商品作りに力を入れたい人向け(職人向け)」のビジネスモデルともいえます。
※ただし、商品作り以上に「プロモーション能力」も必要になってきます。(詳しくは後述)
悪天候時でも売上が左右されにくい可能性がある
通常、飲食店は「その日の天候」で、売上が左右される場合が多いです。
実店舗の場合、「悪天候時の対策」は常に考えておく必要があります。
うちの場合は、売れなかった日はメルマガを打って『フードロス営業』を行っています。
※フードロス営業とは、パッケージングした商品を割引価格で販売する営業方法です。
しかし、ゴーストレストランは配達員が家まで商品を届けてくれるので、天候にはそこまで影響を受けないといわれています。
むしろ、天候が悪い日の方が売上が上がる可能性があります。(家から出たくないという顧客心理によって)
悪天候で通常の飲食店が足踏みする中、ゴーストレストランは売上を伸ばせる可能性を秘めています。
多ブランド化が比較的容易にできる
通常の飲食店の場合、「○○料理の店」のように業種(料理ジャンル)を絞り込む必要がありますが、ゴーストレストランの場合は「1つの厨房があれば、事実上、何業種でも開業が可能」となります。
実店舗は「店構えや看板」を見せるので業種が固定されますが、ゴーストレストランは見せる場が”ネット上のみ”になるので、看板バナーや商品写真は無限に増やすことが可能です。
イメージ的には1つの厨房に、何種類もの料理店が同居しているような状態です。
多ブランド化していければ、その分プラットフォームでの露出が増えるので、「自店が埋もれてしまう」というデメリットも軽減されることでしょう。
ここまで見ると、メリットだらけに見えるゴーストレストランですが、実はデメリットも存在します。
ゴーストレストランのデメリット
プロモーションが大変
ゴーストレストランの場合、通常の飲食店と違って「ふらっと来店する」ということがありません。(実店舗が無いので)
基本的には、ネット上のプラットフォーム(UberEatsや出前館など)から自店を選んでもらい、注文してもらわないとなりません。
しかも数ある飲食店の中から、自店を”選んでもらう“必要”があります。
しかしそうであっても、ネット上の数ある店舗の中から、自店を選んでもらわないとなりません。
つまり「自店を知ってもらう努力(プロモーション)」を、常にしていかなければなりません。
商品力を高めるのはもちろんのこと、写真映えや店舗の魅力を高めるマーケティング力が必要になってきます。
自店と同様の店舗が増えてくれば、価格競争に発展する可能性もあります。
プラットフォームによっては、今後、上位表示させるための「広告販売」が始まって、余計な広告費が発生する可能性も否定できません…。
そんな状況の中、ゴーストレストランは常に「プロモーション(いかに自店を知ってもらうか)」を意識していくことが必須となってきます。
そうしていかないと、数あるネット上の飲食店の中に自店が埋もれていくことでしょう。
ゴーストレストランはビジネスモデルの特性上、「同立地に競合店が密集している状況」なので、実店舗よりも経営難易度は高いといえます。
※上記を「大デメリット①」とします。
結局のところプラットフォームに依存しなければならない
ゴーストレストランを運営する場合、
- 注文を受ける
- 商品を作る
- 商品を配達員に預ける
- 配達員がお客様に届ける
という一連の流れが発生します。
4番目の「配達員がお客様に届ける」は自店では行えないため、フードデリバリーサービスのプラットフォーム(UberEatsや出前館など)に依存せざるを得ません。
そしてこのプラットフォームに支払う費用が、なかなか“エグい”のです。
2019年11月現在、主要プラットフォーム2社への支払費用は…
- 『UberEats』の場合…「初期費用0円、月額費0円、配送手数料35%」が支払費用。
- 『出前館』の場合…「初期費用35000円、月額費3000円、配送手数料5%」が支払費用。
となっています。
そういう意味では出前館の方が始めやすいかもしれません。。
UberEatsを例にすると、1000円の商品を販売した場合、350円がUberEatsに支払う金額になります。
350円だとイメージが湧かないかもしれませんが、これが1ヶ月の売上が100万円だとしたら、35万円がUberEatsに支払う金額になります。
これ、正直、人を雇っているのと同等か、それ以上のコストがかかってくるといえます。
- 食材費…30%
- 人件費…20%
- 家賃…5%
- 光熱費…3%
- 雑用費…2%
- 利益…10%
- プラットフォームへの支払費用…30%
しかも、支払費用はプラットフォームの匙加減一つで決まるため、将来的には“もっと高くなる可能性”も否定できません。(競合が激化すれば逆に下がる可能性もある)
前述したように、ゴーストレストランは「プラットフォームに依存したビジネスモデル」のため、立場的には「弱い立場」といえます。
プラットフォーム依存から抜け出すためには、自店のブランド力を高め、自社で配送環境を整える必要があるでしょう。
その状況まで持っていかないと、なかなかプラットフォーム依存から”脱する”ことは難しいでしょう…。
初期投資(開業費用)の低いゴーストレストランですが、「プラットフォームありき」の部分は、大きなデメリットといえるでしょう。
※上記を「大デメリット②」とします。
提供できる料理の種類は、ある程度限られる
ゴーストレストランというビジネスモデルの特性上、料理が完成してからお客様の口に入るまでには、それなりに時間がかかります。
そのため、出来立てを食べてもらえないと美味しくないもの(ラーメンやパスタなど)は、フードデリバリーには向いていません。
基本的には、「冷めても美味しい料理」がフードデリバリー向きといえるでしょう。
サンドウィッチやサラダはその典型です。
ただ、それだと他店と差別化することができないので、「どこまで工夫できるか」が一つのポイントとなってくるでしょう。
スープに入っているラーメンは無理でも、油そばのような汁無しラーメンならありだと思いますし、メインの商品に保温性の高い商品をセットで販売するのもありかもしれません。
フードデリバリーはまだまだ発展途上の市場なので、今後新たなアイディアが色々出てくるかもしれません。
接客や雰囲気で価値を上げることができない
実店舗の場合、「食べるためだけに来店する」という人以外に、「お気に入りのスタッフに会いたい」「お店の雰囲気に癒されたい」「オーナーとおしゃべりしたい」という“食事以外の目的”で来店する人も少なくありません。
これらは「その店の付加価値」であり、「他店との差別化につながる部分」でもあります。
ゴーストレストランには、これらがありません。
ある意味「商品のみの直球勝負」となります。
それ故、同じような店舗や商品が出てきた場合、他店との差別化が難しくなる可能性があります。
もちろん出店エリアで、ある程度”参入障壁”は作れるものの(自店から3km以内など)、そのエリア内に同じような商品があった場合、単純に価格競争に巻き込まれる可能性も出てきます。
しかも出店エリアの範囲も、将来的にどうなるかは“プラットフォーム次第”です。(範囲が広がれば、更に競合店が増えることになる)
商品以外の付加価値(接客や雰囲気など)で、お客さんにアプローチ出来ない部分は「ゴーストレストランならではのデメリット」といえるでしょう。
リピーターの獲得が難しい
ゴーストレストランの場合、お客さんはプラットフォーム(UberEatsや出前館など)から注文をするわけですが、注文の際『○○(店舗名)から買った』ではなく『プラットフォームから買った』という認識の人が必ず出てきます。
通常の飲食店の場合は『○○(店舗名)で食べた』となり、気に入ってもらえれば”リピート”に繋がりますが、ゴーストレストランの場合は上記の『プラットフォームから買った』と思われる可能性もあり、通常の飲食店に比べると「リピート率は落ちる」といえます。
リピート率を上げるためにも、「独自性」「コスパ」「ベネフィット(得られる付加価値)」などを意識し、常に改善していく努力が必要になってくるでしょう。
配達員が集まる場所は「飲食店密集地」
UberEatsなどの配達員は、基本的に”稼ぐため”に働いている人が多いので、「効率良く、沢山稼ぎたい」と思っている人が多いと思われます。(もちろんそうでない人もいるとは思いますが…)
その場合、1日に何軒もハシゴして配達をすることになります。
そうなると、「”飲食店密集地”で配達を繰り返す」方が、効率良く沢山稼げます。
つまり配達員が出没する場所は、駅前の繁華街や、チェーン店がひしめく国道沿いなど、「ある程度、集合する場所が決まる」と思われます。(都内であれば渋谷駅周辺など)
飲食店が密集する都心部はいいですが、飲食店が疎らな地方では「そもそも配達員が近くに居ない」ということにもなるでしょう。
ゴーストレストランのメリットで「家賃の高い一等地で開業しなくてよい」と書きましたが、上記のように配達員が出没しやすい場所を考えると、一等地ではないが、二等地、三等地くらいにはゴーストレストランを構えておく必要があると思われます。
住宅街なので需要はありそうですが…。
手賀沼が近いから、もしかしたらサイクリングがてら走っている配達員さんがいるかもしれないですが…(^-^;)
フードデリバリーサービスのインフラが整うまでは、田舎での運営は難しそうですね。。
市場が拡大していった場合、それに比例して配達員数を増やしていけるのか?
前述したように、ゴーストレストランは商品の配達に関しては、常にプラットフォームに依存している状況になります。
ここで問題なのが、「全体の数のバランス」。
現時点(2019年11月現在)では、フードデリバリーはまだ一部のユーザー間で利用されている感がありますが、今後は「利用ユーザー数」「登録店舗数」共に増えていくことでしょう。
そうなった時、果たして「配達員」も比例して増えていくのでしょうか?
自分の予想では「余程高待遇でない限り、配達員数が劇的に増える事は無い」と思っています。
将来的には、
という構図になると思われます。
もしこうなってくると、
- 配達員が足らず「なかなか注文ができない」というユーザーが増える。
- 「なかなか注文されない」という店舗も増える。
- 市場全体の満足度が低下する。
という可能性が出てきます。
ゴーストレストランは配達員に依存しているので、これでは商売にならなくなってしまうことでしょう…。
ゴーストレストランは、プラットフォームに依存している以上、「外的要因で商売が立ち行かなくなることを、ある程度想定しておく必要がある」といえるでしょう。
どのような業態も、常に「バックアップ」は必要ですね。
ゴーストレストランのメリット・デメリット まとめ
ということで、今回は「ゴーストレストランのメリット・デメリット」に関してお伝えしました。
まとめると、
- ゴーストレストランの主なメリットは、「初期投資(開業費用)が低く抑えられる」
- ゴーストレストランの主なデメリットは、「プロモーションが大変」「プラットフォームに依存しなければならない」
となります。
ゴーストレストランは初期投資が低く抑えられるので、『店舗を構えて一発勝負する前に、まずは自分の商品が売れるかを見てみたい』という人のための「テスト販売」には良い業態かもしれません。
ただし、デメリットも多いので、それなりの準備が必要といえるでしょう。
また、都内では徐々にインフラが整いつつありますが、地方ではまだまだなので、出店場所には注意が必要といえるでしょう。
自分は自称『自宅飲食店開業の専門家』として活動していますが(笑)、自宅飲食店目線で見ると、実はゴーストレストラン(フードデリバリーサービス)は、魅力ある業態にも感じています。
というのも…
例えば、自宅飲食店兼ゴーストレストランの場合、
「小さい自宅飲食店を開業し、通常飲食店も営業しつつ、フードデリバリーサービスで売上を補填する」
という経営方法が可能になります。
これであれば、ゴーストレストランのデメリットである「プロモーションが大変」は実店舗である程度告知することができますし、「間借りできる店舗を探す」という手間もなくなります。
ただ、前述したようにフードデリバリーサービスに関しては、まだまだインフラが整っていないので、2019年現在では「自宅が繁華街や駅前近くにある」ことが必要になってくるでしょう。(三等地くらいまで)
今回の記事が、ゴーストレストラン開業希望の方に少しでもお役に立てば幸いです。
どうもヨッシー店長です。