前回の第1回個人飲食店の開業講座では、「飲食店経営のリスクとそのデメリット」を紹介しました。(詳しくは→「飲食店経営はハイリスクなのか!? 10の経営デメリットを紹介」)
前回は、ある種“教科書的な事柄”しか書きませんでした。
実は飲食業には、「もっとヤバイリスク」が潜んでいるのです。
今回は12年間飲食店を経営してきた現役オーナーだから語れる「飲食業の継続が困難な10の理由」を紹介していきたいと思います。
記事タイトルからして『もしかして飲食店を経営するって、ヤバイことなの?』と、これから飲食店を開業しようと思っている人に不安を与えてしまうかもしれませんが、「虎穴に入らずんば虎子を得ず」です。
自分にとって不都合なことや飲食業の”裏側”を知る事は「飲食店成功の第一歩」です。
是非今回の記事で、飲食業の”不都合な真実”を知って頂ければと思います。
今回の記事が、これから個人飲食店を開業する方に、少しでもお役に立てれば幸いです。
自店「カフェガパオ」の情報
まず後述の比較対象のため、自店のスペックを書き出しておきます。
※2019年4月現在の情報です。
- 業態:カフェレストラン
- ジャンル:タイ料理
- 場所:最寄り駅よりバスで20分程離れた郊外の住宅街、新興住宅地のメインストリート沿いの角地
- 営業日時:
毎週土・日曜日のランチ(11:30~16:00 LO14:30)は通常店舗営業
月・金曜日のランチ(11:30~14:30 LO14:00)はランチボックス営業 - 席数:店舗内20席、テラス席最大16席(雨天時は使用不可)の最大36席
- 駐車場:6台(店舗横3台、臨時3台)
- 平均客単価:約900円
- 1日の平均客数:土日は50名前後、月金は30名前後
- 主な集客方法:インターネット経由(ホームページ、Google mapなど)、通常のクチコミ、ポスティングチラシ
※外部広告(グルメサイト出稿、新聞チラシなど)は一切無し - スタッフ人数:3~4名(全員親族)
- 収益状況:額面上は黒字だが、家族経営のため家族分の給料を全て経費に入れた場合はやや赤字
カフェガパオのホームページはこちらから↓
それでは以降より、「飲食業の継続が難しい理由」を説明していきます。
その1「飲食業は利益(利益率)が低すぎる」
利益を出していかなければ廃業する
個人飲食店でも一般企業でも「商売をする」ということは、利益を出していかなければいけません。
たまに「利益=儲け=金儲け=金儲けだなんてイヤラシイ」と思ってる人もいますが、利益が出なければ人は生きていけません。
自給自足で生活しているわけでなければ、基本的に人間の生活にはお金がかかります。
最低限必要な「衣・食・住」以外にも、税金や保険、その他様々なお金がかかってきます。
サラリーマンであれば、利益とは言わば”給料”です。
給料が出なければ生きていけないですよね。
個人飲食店も同様で、利益が出なければ経営維持はできません。
そして、利益が出ていないということは「赤字である」ということを意味します。
赤字が続けば、やがてその店舗は廃業を余儀なくされます。
ですので「利益を出していく」ということは、店舗経営にとってとても大事なことなのです。
ちなみに個人飲食店の場合、仮に利益が出たとしても、それが全て「経営者の給料」になるわけではありません。(そういう人もいますが…)
余剰で出た利益は、その後の「業績拡大」や「不測の事態への対応」のためにも、残していく(貯めていく)必要があります。
2020年~の新型コロナ流行は、まさに不測の事態といえるでしょう。
経営者にとって「チャンスが到来した時にいつでも投資できる環境を作っておく」「常にリスクヘッジをしておく」ことは、大事な仕事の一つといえるでしょう。
飲食業は「薄利多売」を強いられる業態
前置きが長くなりましたが、飲食業はこの「利益」がとても少ない業態です。
わかりやすいように「1000円のランチ」を例に出しましょう。
飲食業界でよくあるメニューの内訳はだいたいこんな感じです。
- 食材原価300円
- 人件費400円
- 家賃100円
- 光熱費50円
- 雑費50円
- 利益100円
つまり1000円のランチが売れて店に入る利益は、100円です。
飲食業界では概ね「10%の利益が出れば良い」と言われています。
利益の割合でいえば、10%の利益は決して悪くはないと思います。(小売業などもそうなので)
ただ、飲食業はどうしても「単価が低い業態」です。
同じ利益率でも、利益(実際の金額)に差が出てくる場合があります。
例えば、住宅販売業で利益率10%だとしたら(わかりやすく10%にしています)、1000万円の家を販売したら利益は100万円ということになります。
もちろん住宅は飲食ほど簡単には売れませんが、それでも利益は単純に“1万倍”です。
上記の例だと、住宅販売員が住宅1軒を売る間に、飲食店員は10000食を販売してようやく同じ利益金額になる計算です。
384食なんて、朝から晩まで行列ができる店じゃない限り、達成はほぼ不可能です。
つまり飲食業は、それほど「薄利多売」を強いられる業態ということになります。
先程「10%の利益は決して悪くはない」と書きましたが、業態によっては“低い”とも言えます。
例えば、最低でもパソコン代、サーバー代、制作人件費などの経費しか必要ないインターネットビジネスは、利益率が50~90%というのも珍しくありません。(事業所家賃などは除く)
ちなみに、先生、弁護士、コンサルタントなど、「知識を教える仕事」は、基本的に体一つなので利益率は”高い”です。
自分はネットビジネスの経験もあるため、その視点から見ると「薄利多売で、仕事量が多く、体力的にもキツイ」飲食業は、同じ利益率10%でも、その仕事内容の質が全然違います。(労働時間が長い割には、得られる利益が少ない)
ネットビジネスは体力的には全然楽です。(※もちろんデメリットもありますが)
この部分に気付いて、個人飲食店の経営者だった人が、コンサルタントやブロガーになるケースも結構あります。(自分は半々といった状態)
飲食業は「安定した収入」を得られない業態
また、飲食業はある意味「水商売(収入が不確定な業種)」なので、平均利益率が10%だったとしても、急激に変動して0%になることも珍しくありません。(食材を腐らせた、予約が急遽キャンセルになったなど)
しかも逆に「利益率が急激に20%になる」などはあえりません。(必要経費がある程度固定されているので)
悲しいかな、利益は減ることはあっても、増えることはほとんどありません…。
飲食業はビジネス用語でいうと、「ストックビジネス(月額課金制など)」ではなく、常に「フロービジネス(その都度の売上)」といえます。
多くの飲食店はフロービジネスなので、「安定した収入を得られない」といえます。
※「高齢者向け弁当宅配」などは、逆に”ストックビジネス”といえます。
また、サービスに飽きられて顧客が減ったとしても、一度月額制を始めたら継続しなくてはなりません。(←導入している企業はここら辺どう考えているんだろう?)
上記の理由から、飲食業は「利益が少ない業態」といえます。
利益の少ない業態は、「廃業しやすい業態」ともいえます。(利益が少ないと赤字に転じやすいので)
つまり、飲食業は廃業しやすい業態なのです。
カフェガパオの内訳例
ちなみに、先程の1000円ランチの例をうちの店に当てはめると、こんな感じの内訳になっています。
- 食材原価500円
- 人件費300円
- 家賃0円
- 光熱費50円
- 雑費50円
- 利益100円
スタッフが家族なので人件費をだいぶ抑えられます。
その分、食材費に予算をかけて、お客様に還元する形をとっています。
今のお客さんは舌が肥えている人が多いので(もちろん味覚は主観でしかない)、食材原価が300円なのか500円なのかで、かなり顧客満足度が変わってくると思っています。
当店は常連さんが多いのですが、常連さんになってくれる理由の一つは「顧客満足度の部分が大きい」と自分は分析しています。
いわゆる「コスパが良い」いうやつです。
「カフェガパオはなぜ安い(コスパが良い)と言われるのか?安くできる5つの理由【2018年改訂版】」
その2「飲食業だけでは経済的余裕のある生活は無理」
次もお金絡みの問題ですが、前述した通り飲食業は「利益が低くなりがちで不安定」です。
そのためビジネス構造的には、飲食店オーナー(またはスタッフ)の給料は、必然的に低くなります。
※飲食業界で給料が大きく稼げていたのは、00年代までの話です。
個人飲食店の場合、しっかりと自分の給料が確保できているオーナーさんは全国でどれくらいいるのでしょうか…。
はっきりとは言い切れませんが、2019年現在、個人飲食店のオーナーで「しっかりと給料が出ていて、且つ給料以外に貯蓄ができている人」は、かなり少数ではないでしょうか…?
自分の知り合いの飲食店オーナーたちで上記を満たしている人は、残念ながら誰一人いませんでした。(自分を含め)
『経営はここのところずっと厳しいよ…』という声多数です。
『どうにか飲食店営業以外の収入も作っていかなくちゃならんね…』という声も聞きます。
こんな身近な声からも、やはり飲食店経営のみでは「経済的に余裕のある生活は難しい」というのが実状だと思います。
「副業ブログで初心者がまずは月1万円を稼ぐ方法は? ヨッシー店長流ブログ収益の作り方【2018年版】」
その3「体力に依存、休みはまずない」
飲食業は、営業した日数・時間で売上が決まってくるので、常にマンパワーに依存するビジネスモデル(労働集約型)です。
ですので、営業予定日はよっぽどのことがない限り休めません。
「休み=損失」となりますので。
そして全ての仕事を、体力に依存しています。
体力が落ちてきて、十分な仕事ができなくなってくれば、その分、売上げや利益は下がっていきます。
ある意味で飲食業は、「歳を取るにつれ、体力的にも、経済的にも、どんどん辛くなっていく業態」だといえます。
仮に「週1日休業、1日14時間労働」だった場合、常に一定のパフォーマンスを出しつつ、病気もせず、高齢になるまで現役でやれる人は、どの程度いるでしょうか…。
現在高齢でずっとオーナーをやられている方は、高度経済成長やバブル期、外食産業バブルも経験してきたと思います。
体力は落ちてきたとはいえ、過去の”レガシー”があった分、高齢になるまではなんとか持ちこたえられた部分もあるのではないでしょうか。
しかしながら、これから高齢になっていく20~40代はどうでしょうか?
介護を必要とせず一人で身の回りのことができる寿命、いわゆる「健康寿命」もどんどん延びています。
また、20年以上も不況が続き、日本経済はもはや衰退期に入ったと言わざるを得ません。
レガシーがなく、健康寿命が延びていく環境下では、高齢になる前に力尽きる飲食店オーナーは、今後続出していくと思われます。
その4「病気になっても保証がない」
これはどんな仕事にも共通して言えることですが、「人の替え」は難しいところです。
サラリーマンの場合、人の替えは難しいかもしれないですが、仮に休んだとしても給料が減るということは基本的にはありません。(一部例外を除く)
しかし個人飲食店の場合、休んだら休んだ分、売上は発生しません。
当然給料も入ってきません。(当たり前のことですが…)
1日2日休むならまだ良いのですが、大病などをして長期休業する場合は、死活問題になります。
ですので、飲食業に携わる限り「体調コンディションを整えること」は大事な仕事の一つといえます。
病気になっても保証がない以上、病気にならないようにするしかありません。
飲食業は動く仕事ではありますが、それとは別にストレッチ運動、有酸素運動、発汗、下半身の筋力トレーニングを取り入れることは大事だと感じています。
その5「飲食店の開業費は高すぎる」
飲食店の大きなリスクの一つに、「開業資金が高すぎる」というものがあります。
開業費用はピンキリなので一概に「これくらいかかる」というのは言えませんが、通常数百万~数千万単位で開業資金が必要になってくるといわれています。
ここでは架空店舗の一例と、自店カフェガパオの開業費用を紹介したいと思います。
架空店舗の場合
- 条件は…
- 店舗はテナントを借りるとする
- 賃料は月額30万円とする
- 保証金は10ヶ月分とする
- 礼金は1ヶ月分とする
- 居抜き(前店舗の設備がある)ではなく、スケルトン(設備は一から)とする
- 地方都市の主要駅付近で、駐車場は無しとする
とします。
保証金 | 300万円 |
礼金 | 30万円 |
仲介手数料 | 30万円 |
前家賃 | 30万円 |
厨房機器費 | 100万円 |
看板施工費 | 20万円 |
内装・設計費 | 150万円 |
求人広告費 | 10万円 |
販売促進費 | 40万円 |
備品費 | 30万円 |
合計 | 740万円 |
以上は架空店舗とはなりますが、概ねこれくらいの資金は必要になってくるかと思います。
カフェガパオの場合
次は自店カフェガパオの場合です。
- 条件は…
- 店舗は自宅1階部分を使用
- 家賃は基本的に0円
- スタッフは家族なので求人費用は0円
- 販売促進費は自作のブログやチラシのため基本的には0円
- 完全にスケルトン状態から
- 最寄り駅からはバスで20分と田舎に位置する、駐車場は有り
となっています。
保証金 | 0円 |
礼金 | 0円 |
仲介手数料 | 0円 |
前家賃 | 0円 |
厨房機器費 | 40万円 |
看板施工費 | 5万円 |
内装・設計費 | 150円 |
求人広告費 | 0円 |
販売促進費 | 0円 |
備品費 | 20万円 |
合計 | 215万円 |
前述の架空店舗に比べると、約1/3の資金で開業ができました。
自宅飲食店(店舗併用住宅)の場合は、テナントのように保証金や礼金などが必要ないので、この部分でもだいぶ資金が抑えられました。
また、自分の場合は前職でデザインやウェブ関係の仕事をしていたので、自分で作れるものは全て作るようにしました。(ホームページ、看板、チラシ、メニューブック等)
ということで2つ例をあげてきましたが、
- 安く済ませたとしても、200万円以上
- 小規模個人飲食店でも、400~800万円以上
- 大規模個人飲食店の場合は、1000万円以上
位はかかると考えておいた方がいいでしょう。
『コロンブスのたまご』という飲食業のコンサルティング会社のページに「開業資金、運転資金簡易シミュレーションシート」というエクセルファイルがあるので、そちらも参考にするといいかもしれません。(ページの下の方にあります)
コロンブスのたまご
2020年に急激に増加した「ゴーストレストラン」というビジネスモデルは、開業費がめちゃくちゃ抑えられます。
なぜ抑えられるかというと、「厨房しかない」からです。
ただしゴーストレストランにもデメリットがあるので、一概に「開業するならゴーストレストランが良い」とは言えません。
ゴーストレストランのメリット・デメリットを、飲食店経営者目線で考えてみた
その6「飲食業は経費が高すぎる!特に人件費」
前回の講座「飲食店経営はハイリスクなのか!? 10の経営デメリットを紹介」でも紹介しましたが、飲食業はとにかく経費が高いです!(売上の約90%が経費)
経費には、店舗家賃、メニューの原材料費、光熱費などがありますが、中でもダントツに高いのが「人件費」。
つまりスタッフの給料です。
前述したように飲食業は「労働集約型のビジネスモデル」のため、スタッフが居ないと成り立ちません。
なので、どうしても人件費は高くなりがちです。
さらに昨今、スタッフの募集をかけても集まらないこともあり、一人当たりの人件費は昔よりも高騰しています。(時給を上げないと応募が来ないので)
大手も四苦八苦していますが、中小規模の個人飲食店はさらに厳しい経営環境といえます。
ちなみに店舗家賃は、テナントなどの「賃貸」か、自宅などを改装した「持ち家」かで、相当差が出てきます。
その理由は以下のページでも紹介していますので、よかったら参考にしてみて下さい。
自宅を改装して飲食店を開業!現役タイ料理カフェオーナーが自宅飲食店のメリット・デメリットをまとめてみた
その7「現在の飲食業界はスタッフが集まらない」
現在、飲食業界は人手不足に苦しんでいます。
人手不足の理由は「少子高齢化」の影響があるとは思いますが、自分が考える一番の原因は
「若者が飲食業を毛嫌いしている」
という点。
仕事量の割りに給料が少ない、ブラックバイトやブラック企業は飲食業界に多いイメージ、そもそも人(お客)とコミュニケーションを要する仕事に就きたくないなど、様々な要因が考えられます。
それ故、都内の飲食チェーン店では、外国人労働者の数が目立ちます。
なぜなら、外国人労働者は”ロボット”ではありません。同じ感情ある人間です。
日本人が毛嫌いしている職種に、進んで就くわけがありません。(余程の目的や理由が無い限り)
最近はSNSを使って外国人労働者間で『飲食業界はブラックだよ』と情報共有されているらしいです。
経済的メリット(数年日本で働けば自国で家が建てられるなど)も、今の日本にはほとんど無いでしょう。
こうなってくると、当てにしていた外国人労働者も飲食業界に来ない可能性は高いです。
自分に置き換えれば、よくわかると思います。
海外に出稼ぎに行って、その職場が現地人も嫌う労働環境だったら、他の職、もしくは他の国を選ぶことでしょう。
そもそも労働力を”コスト”として考えること自体が間違いです。(政府も飲食業界も)
外国人労働者は都合の良い”穴埋めロボット”ではありません。
全ての人にリスペクトが必要です。
知り合いのオーナーの一人は、「求人広告に20万出したけど、一切応募が無い…」と半ば諦め顔で話していました。
自分は旧ブログで「飲食業界は”ツケ”を払う時代が遂にきたのかも」という記事で書きましたが、業界全体で従業員に対して”作業ロボット扱いしたツケ”が今になって返ってきたようにも思っています。
飲食業界やコンビニ業界などが大きな例です。
今後も人材の確保は難しくなることでしょう。
ですので、今後個人飲食店を開業したい人は「いかに少人数で営業できるか」を考えながら開業計画を進めることをお奨めします。
カウンター6席くらいで、高単価商品を出す飲食店が理想的かもしれませんね。(カウンター寿司屋はある意味理にかなっているかも)
『一人焼肉』のようなビジネスモデルも今後増えていくかもしれません↓
「焼肉ライクを参考に「1人焼肉のビジネスモデル」を分析してみた!高利益を生み出すその仕組みとは?」
参考までに→「新事業形態「ランチボックス営業」開始から半年経過 その後事業はどうなったのか!? 現状と感想を店主が告白します」
その8「運転資金が最低でも半年から1年は必要」
個人飲食店をオープンすると、最初はその物珍しさから足を運ぶお客さんも多いのですが、数ヶ月もするとオープン当初に比べて客足は減ります。
通常、ここで一旦売上げが停滞する場合が多いです。
さらにここから先、常連客や新規客が定着していくまでには、かなりの時間を要します。(一般的に)
恐らく売上げが安定するのには、最短でも半年から1年はかかるのではないでしょうか…。
つまり、オープンから1年間は「ほぼ利益がないのを覚悟する」ようでないと、飲食業の経営は厳しいです。
それはイコール「そこまでの運転資金が必要」ということを意味します。
現在、ここを乗り越えられないで潰れていく個人飲食店が後を絶ちません…。(開業から3ヶ月後に資金ショートする場合もあります)
開業資金に既に数百万円かかっていて、なおかつその後の余裕な資金も用意しないといけないというのは、飲食業は本当に厳しい業態だと思います。
その9「お客さんがデフレ価格に慣れすぎている」
これは地方都市で特にそうですが、デフレ時代が長かったせいか、飲食店の価格に関してはみんな敏感です。
メニューに「価値がある」と判断されれば多少高くても来店はありますが、現在のお客さんは「なるべく失敗したくない(損したくない)」という心理が強いため、価格が高いとそれが障壁になって来店も億劫になりがちです。
自分もそうですが、Googleや食べログなどで評価を調べるのは、そういう心理が影響しています。
そして、デフレ経済が続いて「飲食店のご飯の価格(低価格)はこれくらい」というのが、染み付いてしまっている感じがあります。
以前このブログで「ランチボックス(弁当)を750円で販売します」ということを発表したことがあるのですが、『750円は高いのではないでしょうか?』というご意見を頂いたことがあります。
たしかに「弁当が750円」と聞くと高く感じる方も多いかもしれません…。
この「高く感じる」という部分が、デフレ経済が続いて定着してしまった”感覚”なのだと思います。
そう考えると、最初は低価格で始め、ある程度クチコミが広がった時点で価格を上げるやり方が良さそうです…
が、飲食業では「値段を下げるのは簡単ですが、値段を上げるのはかなり難しい」です。
なぜなら定着しているお客さんは「その価格で価値を感じている」可能性があるから。
ですので、価格ではない部分でその店の”価値”を見出していかなくてはなりません。
ちなみに自店のカフェガパオも同様に、最初は低価格設定で敷居を下げ、クチコミや常連さんが付いた後で値上げを実行しました。
とはいっても、価格を上げたのは営業スタートしてから4年半後ですが…。
もちろん値上げにはきちんとした理由を明記・お知らせした上で行いました。(←ここはとても重要です)
もし何も理由を明記せず、「ただ単に価格を上げた」とお客さんに思われた場合は、かなりマイナスイメージになることでしょう。
その10「集客の詳細分析ができない」
大手飲食チェーン店の場合、POSレジの導入などで、顧客情報をある程度分析することは可能です。
ただ、POSレジも完璧ではないので、データ分析ができる範囲はある程度限られます。
大手でその程度ですので、個人飲食店では分析できる範囲は、もっと狭いものになりがちです。
うちの店の場合でも「あれ?今日はなんでこのメニューやたら出るんだろ?」と思ったときに、「どこかのテレビでやってたのかな?」と思いリサーチしてみたら「王様のブランチでやってた」ということもありました。
ただ本当にそれが正しいかどうかはわからず、あくまでも”予想”にしか過ぎません。
これが、例えばネットショップの場合、様々な顧客情報を分析することが可能です。
残念ながら飲食業はアナログな業態なので、分析できる範囲はどうしても限られます。
どうしても詳細分析をしたい場合は、これもアナログですが「テーブルにアンケート用紙を置いておく」という方法が意外と有効です。
料理提供までの待ち時間に書いてくれる人は結構います。
まとめ
ということで、今回の講座では「飲食業継続が困難な理由」を紹介してみました。
今回の記事を大雑把にまとめると、こんな感じです。
- 飲食業は利益(利益率)が低すぎる→10%の利益が出れば良い方、薄利多売を強いられる業態
- 飲食業だけでは経済的余裕のある生活は無理→ビジネス構造的にスタッフの給料は必然的に低くなる
- 体力に依存、休みはまずない→休み=損失となるので、よっぽどのことがない限り休めない
- 病気になっても保証がない→病気になって休んだら売上は発生しませんし、当然給料も入ってきません
- 飲食店の開業費用は高すぎる→安く済ませたとしても200万円以上、小規模個人飲食店でも6~800万円以上はかかってくると思っておいた方がいい
- 飲食業は経費が高すぎる!特に人件費→飲食業は労働集約型なので、人件費は高くなる傾向がある
- 飲食業はスタッフが集まらない→現在飲食業界は人手不足、スタッフ募集してもなかなか集まらない
- 運転資金が最低でも半年から1年は必要→オープンから1年くらいはほぼ利益がないのを覚悟する必要あり、運転資金が重要
- お客さんがデフレ価格に慣れすぎている→「飲食店のご飯はこれくらいの価格(低価格)」というのが染み付いている
- 集客の詳細分析ができない→ネットショップのように「どうやって店に来たのか」の詳細分析ができない
参考になりましたでしょうか?
2回続けて「飲食業を継続させることは難しい」とお伝えしてきました。
これは、経験者だからこそ伝えられるある種の”警告文”です。
「お手軽に飲食業を始めると、大変なことになりますよ」と強くお伝えしたく、あえて2回に渡って講座を行いました。
今回の講座内容が参考になれば幸いです。
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どうもヨッシー店長です。
pluck(プラック)は「引き抜く」という意味の他に、「勇気」という意味もあります。
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