2020年は、世界的に見ても「新型コロナの年」になっていますね。
各所で様々な影響が出ていますが、自分がいる飲食業界でもその影響が大きく出ています。
特に外出自粛による来店客激減で、多くの店舗で売上が激減しました。(前年比50~90%減の店舗も珍しくない)
テナント店舗(ビルなどに入っている飲食店)の場合は、固定費(家賃や人件費など)が重くのしかかり、廃業を余儀なくされる店舗も増加しています。
それが今回の外出自粛の影響で売上がほぼゼロになると、この100万円は余剰資金から捻出するか、金融公庫などから出資(借金)して支払うしかなくなる。もしくは諦めて廃業するか…。
今後の状況が見えない&元々外食産業が下火になっていたこともあり、人気店でもあえて廃業を選択するケースも増えている。
「持続化給付金」が支給されているものの、それも”一時しのぎ”に過ぎず、根本の解決には至っていない。
そんな状況の中、改めて思ったのが
「自宅飲食店は生存率が高い」
ということ。
※自宅飲食店の説明はこちらから→「自宅飲食店とは? →「店舗併用住宅で飲食業を営む個人の飲食店」のこと」
今回の外出自粛の環境下では、
固定費が重くのしかかるテナント店舗はダメージが大きく、
固定費が比較的抑えられる自宅飲食店はダメージが小さい、
といえます。
ということで今回は、「外出自粛などが起こった際の自宅飲食店のメリット」を、改めて考えてみたいと思います。
今後、自宅で飲食店を開業しようと思っている方に、少しでもお役に立てば幸いです。
メリット①「固定費が低く抑えられる」
今回の外出自粛で、多くのテナント店舗にダメージを与えたのが、
家賃や人件費などの「固定費」だったといえます。
原材料費や水道光熱費などの「変動費」は休業になっていればかかりませんが、固定費は売上が無くてもかかります。
さて、自宅飲食店の場合はどうかというと…
店舗家賃
自宅飲食店は文字通り「自宅」なので、店舗家賃は「ゼロ」です。
※住宅ローンなどはここでは除く。
休業したとしても、同じく家賃はゼロです。
これは自宅飲食店の「大きなメリット」といえるでしょう。
もしテナント店舗の家賃が10万円だった場合、相対的に考えると自宅飲食店は「毎月10万円の利益を得ている」ともいえます。
さらに、テナント店舗を借りて、自身も賃貸物件に住んでいる場合は、店舗と自宅で「二重家賃を払っている」ともいえます。
この時点で自宅飲食店とテナント店舗では「家賃に大きな差がある」といえます。
人件費
自宅飲食店は家族経営の場合が多く、総じて「人件費は低い」といえます。
家族だけなら、基本的に休業補償(人件費)なども発生しません。(※詳しくは後述します)
水道光熱費
自宅飲食店の場合、水道・電気・ガス代を自宅分と店舗分で折半することができ、経費として計上することができます。(節税できる)
自宅と店舗の基本料金は一つで済むため、店舗用の基本料金を余計に支払わないで済むのもメリットです。
うちの場合も、自宅は40Aで済んでいますが、店舗では60Aに上げています。
店舗では冷蔵庫、製氷機、換気扇、エアコンなど、かなり電気を使うので、できれば自宅用よりも上げておくことをお勧めします。
夏場は60Aでもブレーカーが落ちることがあります。(エアコンの冷房で)
メリット②「一時休業が可能」
無料で店舗物件を維持できる
自宅飲食店は“家賃がかからない”ので、一時的に店を閉め、準備が整い次第再度「復活開業」することができます。
つまり自宅飲食店は「無料で店舗物件を維持できる」といえます。
これは、毎月家賃が発生するテナント店舗では基本的に不可能です。(大家さんの理解があれば別ですが)
今回の外出自粛時だけでなく、大きな災害などが起きて営業ができない時も「無料で店舗物件を維持できる」というのは大きなメリットといえます。
他で働くこともできる
また、一時休業が可能なため、「他で働く」こともできます。
通常、飲食店を開業した後「他で働く」ことはできません。(←そんな余裕は無い)
しかし自宅飲食店は一時休業が可能なため、あえて休業し、「他店で修行する」「他業種で研修する」といったことも、物理的には可能です。
ただしこれには条件があって、
「一時休業を理解してくれるファン度の高い常連客が既に沢山いる」
ことが条件です。
なぜなら長期間店を閉めてしまうと、『潰れちゃったのかな…』『いつ来ても休業だから他の店に行こう』と、段々顧客が離れていく可能性があるからです。
一時休業する場合は、それなりの“理由”を常連客に説明する必要が出てくるでしょう。
新規事業の準備ができる
休業している間に新規事業(テイクアウト、デリバリー、ネット通販など)の準備も可能です。
通常、飲食店を経営しながら新規事業を立ち上げるのは、かなり大変です。(特に週6日以上営業する個人飲食店の場合は)
でも一時休業が可能な自宅飲食店は、これらの時間も比較的取りやすいといえます。
メリット③「休業補償が発生しない」
他人を雇っている飲食店の場合、休業する際は「休業補償(給料補償)」が発生します。
これが家族だけで経営する自宅飲食店の場合、休業しても休業補償は発生しません。(事実上は)
これはある意味で、「人件費を抑えられる」ともいえます。
もし家族以外に他人を雇っていた場合でも、「従業員が全員雇用者」の店舗に比べると、圧倒的に人件費は抑えられるといえるでしょう。
メリット④「多店舗経営ではない」
今回の新型コロナで、最もダメージを負った飲食店経営者は、恐らく「多店舗経営している経営者」でしょう。
1店舗ならまだしも、数店舗以上経営している状態で「全ての店舗で売上がほぼゼロ」だと、その損害額は相当大きなものになります。
家賃だけで比較してみても、
- 1店舗…1ヶ月の家賃10万円→損害額10万円
- 5店舗…1ヶ月の家賃10万円→損害額50万円
と、店舗が多ければ多いほど損失額も大きくなります。
逆に言うと「店舗が多ければ多いほど稼げる」ともいえます。
ただ今回の場合はそれが裏目に出てしまいました。
自宅飲食店の場合、“自宅”というだけあって、基本的に店舗は1店舗のみ。
そのため今回のような外出自粛が起きたとしても、損失は1店舗のみとなります。
まあそれでも個人店にとっては大きな損失ではありますが…。
自宅飲食店は、多店舗経営に比べたら稼ぐことはできませんが、今回のようなリスクは「最低限に抑えることができる」といえます。
今後、大規模災害が起きた際も、同じことがいえるかもしれません…。
メリット⑤「住宅地でも勝機あり」
今まで飲食業における“好立地”とは、「人が多く集まる場所」といわれてきました。(繁華街、駅ビル、観光地など)
また、郊外の住宅地にある飲食店は「飲食業には不向きな立地」といわれてきました。
それが今回の新型コロナ騒動で「人が多く集まる場所」は避けられ、「住宅地にある飲食店」は来店数が増える、という逆転現象が起こりました。(全ての場所がそういうわけではないですが)
今後の「withコロナ時代」を考えると、飲食業には不向きだといわれてきた住宅地も、決して「不利な立地ではない」とわかった一件だったでしょう。
つまり、「住宅地にある自宅飲食店にも勝機がある」といえます。
今まで自宅飲食店の弱点は「人が集まらない場所にある」ということでしたが、これもwithコロナを考えると、適用されなくなってきたかもしれません。
デリバリー需要の増えてきた昨今なら、デリバリーをメインにした自宅飲食店もありかもしれません。
※ゴーストレストランの解説はこちらの記事で→「ゴーストレストランのメリット・デメリットを、飲食店経営者目線で考えてみた」
「外出自粛などが起こった際の自宅飲食店のメリット」まとめ
ということで今回は「外出自粛などが起こった際の自宅飲食店のメリット」を改めて考えてみました。
ここまでを箇条書きで簡単にまとめておきます。
- メリット①「固定費が低く抑えられる」→店舗家賃がゼロ(大きなメリット)、人件費は低い、水道光熱費は自宅分と店舗分で折半できる。
- メリット②「一時休業が可能」→無料で店舗物件を維持できる(大きなメリット)、他で働くこともできる、新規事業の準備ができる。
- メリット③「休業補償が発生しない」→人件費を抑えられる。
- メリット④「多店舗経営ではない」→外出自粛が起きたとしても損失は1店舗のみで済む。
- メリット⑤「住宅地でも勝機あり」→withコロナ時代では、住宅地は決してデメリットではなくなってきている。
今回の新型コロナ騒動で、飲食店が最もダメージを受けたのは、やはり「固定費(家賃や人件費など)」だったといえるでしょう。
この固定費をどれだけ抑えられるかで、店舗の生存率が変わってきます。
自宅飲食店は、この固定費が「最も抑えられるスタイル」だと自分は考えています。
今まで弱点だといわれてきた「人が集まらない場所(住宅地)」も、withコロナ時代では決して弱点ではなくなりました。
今後、自宅飲食店を開業しようと思っている人には、ある意味で“追い風”が吹いているのかもしれませんね。
今回の記事が、自宅飲食店の開業を目指している人に少しでもお役に立てば幸いです。
どうもヨッシー店長です。