
自宅をおしゃれな空間にして、自分の好きなドリンクやスイーツでお客様をもてなす。
そんな「自宅カフェ開業」は、多くの人にとって夢のようなライフスタイルです。
SNSでは、可愛らしい店内や手作りメニューがたくさんシェアされ、
「こんな暮らし、いいな♪」
と憧れる方も多いでしょう。

その頃は「ドッグカフェ」でしたが…(^_^;)
しかし、その裏側には、決して見せられない「厳しい現実」が隠されています。
「あえて言おう!自宅カフェ開業は、絶対にやめておけ!…と」
(『機動戦士ガンダム』からギレン演説風)
今回の記事では、なぜそう言い切るのか、その理由を
「自宅カフェを夢見ていたが、最終的には自宅タイ料理屋をやっている現役オーナー視点」
で解説していきます。
【1】夢見た「自宅カフェ」と現実のギャップ
自分のペースで、好きなものを作って、お客様と和やかに会話を楽しむ…。
そんな理想のカフェ像を思い描いていませんか?
確かに「理想」は自由で素敵です。
実際には、仕込み・掃除・接客・会計・在庫管理など、すべてを一人でこなさなければなりません。
朝早くから夜遅くまで、自由どころか「終わりのない仕事」に追われる日々になります。
「売上がある=儲かる」ではありません。
原材料費・家賃(住宅ローン)・水道光熱費・消耗品…すべての経費を差し引くと、実際に手元に残るお金はほんのわずか。
長時間働いたのに、月数万円しか残らないというケースも少なくありません。
【2】「集客できない問題」が想像以上に深刻
駅チカでも人通りがあるわけでもない場所にある自宅は、そもそも飲食店として不利です。
「ただオープンするだけ」では、決して多くの人には知ってもらえません。
知ってもらえないということは、イコール「存在していない」のと同じことになります。
これを打破するために、チラシを配ったり、SNS投稿する人も多いと思いますが、想定以上に
「誰も来ない」
という現実にぶつかることも多いです…。

Googleビジネスプロフィール
Instagram
LINE公式アカウント
などのデジタル集客は、飲食店経営で必須スキルとなっています。
これらのスキルが無い人は、集客に苦労することになるでしょう。
また、自宅カフェは「地域密着型のビジネス」と言われることがあります。
「地域密着型」とは聞こえは良いですが、人口が少ないエリアでは、リピーターだけでは商売が成立しません。
ご近所づきあいが濃いエリアでは、逆に来づらい雰囲気になることもありますね(-_-;)
【3】「飲食店営業許可」の壁は意外と高い
自宅だからといって、自由に飲食店が開けるわけではありません。
「自宅=飲食営業できる」は間違いです。
飲食店営業には、保健所の許可が必要で、厳しい設備基準を満たさなければなりません。
例えば…
- 厨房と客席がドアで分かれている。(スイングドアなどでもOKな場合もある)
- 厨房のシンクは、二槽以上必要。
- 手洗いシンクが別途必要。(固定の消毒装置付きも必要)
- 床材が耐水性になっている。
- 冷蔵庫がある。(温度計が必要)
- 食器などをしまう棚に扉が付いている。
- 換気設備がある。
- トイレには手洗いシンクがある。
- 店舗と自宅の境目にドア等がある。
- 厨房内は耐水壁シートになっている。
などの設備基準があります。(各自治体によって基準が異なる)
また、これらの改装費用で50万~200万円かかることも珍しくありません。
この初期投資が回収できるかどうかも、開業前にしっかりシミュレーションしておかなくてはいけません。
ちなみに改装費に100万円がかかったと想定して、もしドリンク類で1杯300円の利益が出たとしても、回収するには3333杯売らないと初期投資が回収できない計算になります。
仮に1日平均10杯しか売れない場合、期間は333日間かかる計算になります。
つまりドリンクのみで初期投資を回収するだけでも2年近くはかかることになります。(それ以上の可能性も高い)
利益から自分の取り分を取れば、さらに長い回収期間がかかります。
【4】利益が出にくい「カフェ業態」の本質
飲食業の中でもカフェという業態は「利益率が低いビジネスモデル」として有名です。
バーやラーメン屋よりも「潰れやすい」と言っても過言ではありません。。
この理由は、
「客単価が低いにもかかわらず、回転率も悪い」
からです。
前述した
バーは「客単価はそこそこ高め、回転率は悪い」
ラーメン屋は「客単価は低いが、回転率は良い」
となります。
この2種は基本的に「潰れやすい業種」です。
なのにカフェは「客単価が低い、回転率も悪い」となり、潰れやすい業種に拍車をかけています。
「趣味でやる」ならまだしも、ビジネスとしては極めて難易度が高いといえます。

人口の多いエリアで「時間調整のため」「ひと休憩のため」で利用されるカフェでないと、ビジネスとしては成立しにくいですね。
自宅カフェの場合、余程の「名物メニュー」が無い限りは、お客さんはなかなか来店してくれないことでしょう。
お茶だけなら自分の家や友人の家でもできてしまうので。。
500円のコーヒーを売るために、何時間働く必要があるのかを冷静に考えてみてください。
商品設計に戦略がないと、確実に赤字になります。

ドッグカフェで働いたこともありますが、ドリンクのみで数時間おしゃべりをして売上が1500円もいかないですからね…。
仮に1日10組来店しても、売上金額は2万円いかない場合も平気であったりしますからね。。
ドリンクは原価が低いですが、それ単体では経営は成り立たないといえます。
他に単価の高い商品があれば別ですが(ペットホテル、トリミングなど)、カフェ単体のビジネスではだいぶ厳しいですね。
【5】継続できる人は「戦略家」だけ
「夢をカタチにしたい」だけでは、半年で心が折れます。
必要なのは、数字管理・人間関係・マーケティングのスキルです。
マーケティング・数字管理ができないといずれは潰れます。
また、自宅カフェといっても「経営者」であることが求められます。
「今日は何人来たか」「いくら使ってくれたか」「何が売れたか」…これらを毎日分析し、常に改善(PDCAサイクル)を行っていく必要があります…。
これが苦であったり、楽しめないという人には、経営者には向いていないのかもしれません。。
もし、この厳しい現実を前に「それでも挑戦したい」と思えるなら、あなたにはきっと素質があります。
ただし闇雲に『挑戦したーい!わーい!(^-^*)♪』という「感情」ではなく、
『絶対に挑戦します!(-_-)q』と冷静に、そして「戦略的に動くこと」が必要になってきます。
飲食業は本当に「難易度の高いビジネス」なので、「これなら上手くいきそう」ではなく、
「●●という理由から、●●という根拠があるから、70%の確率で上手くいくかもしれない」
といった理性的な判断が求められます。
自身の考え方がこの境地に達していない方は、もしかしたらまだ開業のタイミングではないかもしれないですね。
そうでないと「多くの時間とお金を無くす」ことになるので。。
まとめ
自宅カフェ開業は、決して「簡単なビジネス」ではありません。
自宅があって、営業許可を取れば、誰でも始めることは可能ですが、経営が続くかどうかはまた別の話です。
自宅カフェは、「戦略なしでは最も潰れやすい飲食形態のひとつ」と言っても過言ではないでしょう。
潰れやすい自宅カフェですが、それでもやってみたい場合は、まずはこんな方法で小さく始めるのがおすすめです。
- 本業を持ちながら、副業として週末だけ営業してみる
- テイクアウトやイベント販売から始める
- 店舗を持たず、オンライン販売でファンを作る
うちの近所にも自宅カフェがあったのですが、2年もしないうちに閉店してしまいました…。
恐らく「ビジネスとしての戦略が無かったのかもしれないのかな?」と個人的には感じています。
やはり自宅カフェであっても、「商売」となった時点で、しっかり「経営」をしていかなければ、いずれは廃業となります。
お金をかけずに始めやすい自宅カフェですが、開業する前にはしっかりとした心構えと準備が必須といえますね。

自宅カフェではないですが、自宅飲食店を13年以上運営しているので多少なりお役に立てるかと思います。
今回の記事が今後自宅飲食店開業を目指している人にお役に立てば幸いです。
どうもヨッシー店長です。