裁量労働制で年間4000時間働かされた話 過労死寸前になると幻覚が見えてくる 裁量労働制は絶対導入すべきではない

裁量労働制の体験談とそのヤバさ

最近ずっとニュースで話題になっている「裁量労働制」。

もし今後この働き方が”合法”になって拡大解釈されるような社会になったら、「過労死するサラリーマンが続出する」と思う。

どうもヨッシー店長です。

 

裁量労働制(みなし労働時間制)とは、簡単にいうと『仮に8時間で出来る仕事を4時間で出来た場合でも、8時間働いたと”みなす”よ』という制度です。

 

政府は、上記の例でいうと『4時間早く退社できるんだから、その分他のことに時間を使えよね。そしたら人生が充実するでしょ』と言っていますが、これは裁量労働制の都合の良い”片方のこと”しか言っていません。

もう片方の“不都合な真実”には触れていません。

 

もう片方の不都合な真実とは、前述の例で説明すると、

『8時間で出来る仕事に12時間かかったとしても、8時間で仕事ができたと”みなし”、残業代は出ません』

ということです。

 

どれだけ働いたとしても(働かされたとしても)、賃金は一定。

後述しますが、仮に早く仕事を終わらせても、実際には早く帰れない現実があります。

つまり、裁量労働制は一定の賃金で無限に働かされてしまう『定額働かせ放題』という意味合いの強い制度になります。

 

この裁量労働制、自分がかつて所属していたゲーム制作会社でも採用されていて、過去に“地獄の日々”を過ごした経験があります。(今から15年前)

 

経験者からすると、もし現在の「働き方改革関連法案」で裁量労働制の適用範囲が拡大された場合、「これはヤバイことになるな…」と危惧しています。

なぜなら裁量労働制という名の”無限労働”が合法化されたら、確実に過労死するサラリーマンが続出すると思うからです。

 

自分も実際に年間4000時間労働をさせられ、過労死寸前、幻覚を見る健康被害、鬱病(自殺願望)を発症した経験があるので、裁量労働制は“本当に危険な働き方だ”と声を大にして言いたいです。

 

ということで、今回は自分の経験談と、裁量労働制のヤバさを考察してみたいと思います。

 

スポンサードリンク


 

裁量労働制の過去の実体験

裁量労働制の過去の実体験

自分は1999~2003年の約5年間、某TVゲーム制作会社に所属していた過去があります。

職種としては主にデザイナーで、その中でも「モーショングラフィックデザイナー」というキャラクターに動きをつける仕事をしていました。

今ではモーションキャプチャー(実際に人が動いてその動きを取り入れる技術)が主流ですが、その頃はまだ手作業で動きをつけていました。

モーションキャプチャー

ちなみにモーションキャプチャーもやったことがあります。っていうか若っ!(笑)

 

この会社に入社する時、面接時に『うちは裁量労働制を採用しています』と言われました。

この頃はまだ若かったこともあり、裁量労働制の大まかな概要は理解していたものの、まさか会社が裁量労働制を“悪用している”なんて思いもしませんでした。

 

ちなみに、1990年代終わり頃のTVゲーム業界では、この裁量労働制を導入している会社が多く、しかも『定額働かせ放題』だということを理解しながら、制度を悪用する会社が蔓延していました。

 

とある会社の面接に行った時、『うちの会社では裁量労働制を採用していますが、まあ好きな事やれるんだから、そこは納得してもらわないとね…』と会社幹部の女性社員に言われたことがあります…。

これってつまり、『定額働かせ放題でこき使うけど、文句なんて言うなよ』という意味です(^▽^;)コエー!

 

話が逸れましたが、そのゲーム制作会社に入社後、3年目までは長時間労働にも文句を言わず、「人生の修行だ」と自分に言い聞かせながら日々仕事をこなしていきました。

ほぼ毎日長時間労働(平均して14時間程)でしたが、裁量労働制なので残業代は一切出ていませんでした。

 

入社4年目、とある新プロジェクトが始まり、さらに仕事が激務になっていきました。

その結果、「連続52時間勤務」「6ヶ月間1日の休日も無し」「1ヶ月の労働時間が512時間になることも…」「3週間会社に缶詰めで風呂にも入れず、寝る場所はデスク下か椅子(1日平均18時間労働)」という、今なら訴えれば損害賠償確実の超絶ブラック環境となっていきました。

 

冒頭に「年間4000時間働かされた」と書きましたが、これってイマイチ分かりづらいと思いますが…

4000時間を1年間(365日)で割ってみると、1日約11時間となります。

つまり、365日連続出勤して、毎日11時間以上働かないと達成できない時間数となります…。

 

さらに、そのゲーム制作会社のパブリッシャー(ゲーム制作会社に出資している販売元)がヤクザ系で、マイルストーン(月末の締め日)になると会社に現れ、制作スタッフが逃げ出さないように、会社の入り口で監視するという、いわば”軟禁”をしていました。

 

正直、今考えてもゾッとする労働環境ですね…(-_-;)

実際環境がヤバすぎて、途中で会社から消えた人や、鬱病になる人も続出していました。

 

自分もプロジェクトの終盤、以下の状態に陥りました。

  • 3週間椅子に座り続けて、体の筋力が異常に低下する。
  • 3週間椅子や机の下で寝ていたため、体のあちこちが痛み出す。
  • 3週間風呂に入っていなかったので体臭が異常になっていたらしい。(当時彼女だった妻談)
  • 時間の感覚がなくなり、一瞬寝たのか数時間寝たのかがわからなくなっていった。
  • 脳の一定の部分しか使っていなかったため、一時的に短期記憶障害になった。
  • 鬱病というか気が変になって、「逆に仕事していると落ち着く」という状態になっていった。
  • 何を食べても味が感じられず、消化機能が低下して2日に1食でも平気になっていった。
  • 視界の片隅で、ゴソゴソ動くゴキブリの幻覚を見始めるようになっていった。
  • 「こんなに辛いならいっそ死んだ方が楽かも…」と自殺願望も芽生え始めた。

 

他にも細かい部分で色々ヤバイ症状が出ていたと思いますが、もう15年も前のことなのであまり詳しくは覚えていません…。

ただ、「過労死の一歩手前まで行っていた」のは確実ですね。

 

自分の場合はちょっと特殊な環境だったかもしれませんが、それでも裁量労働制が普通に導入されれば、「こういう人も増えてくる(過労死したり自殺したり)」可能性はあると思います。

特にクリエイティブな仕事は、いくらでも”クオリティーアップ”が出来てしまうため、終わりが明確ではありません。

 

自分はその後会社を退職して、自殺願望も消えましたが、あのまま会社に残り続けていたら、死を選んでいた可能性も無くはないですね…。

もしあそこで死んでいたら、優や翠にも出会えなかったと思います…。

 

自分は死を選びませんでしたが、でもそういう環境の中、死を選ぶ人もいることでしょう。

働かされるだけ働かされて、挙句自殺する…。

これは本当に悲しい人生ではないでしょうか…。

裁量労働制にはそれを引き出す要素が存在しています。

 

だから自分は言いたい、「裁量労働制、ダメ、絶対!」

 

裁量労働制を全否定するわけではないですが、現行のままでは『定額働かせ放題』となるのは必至でしょう。

なぜならどこの企業も「人件費の削減」を望んでいるわけですから…。

 

 

裁量労働制のここがヤバイ!

裁量労働制のここがヤバイ

適用拡大されるかもしれない裁量労働制ですが、現行でも十分ヤバイことだらけです。

以下その紹介です。

 

結局裁量が与えられているのは、労働者(会社員)ではなく使用者(企業)

裁量労働制は、働いている人に裁量(決められる)がある働き方ですが、現実には裁量がない場合が多々あります。

前述したゲーム制作会社にいた自分も、裁量労働制なのに裁量はありませんでした。

 

こちらはフィクションですが、ある会社の部下が8時間で出来る仕事を4時間で出来たとします。

部下
今日は仕事が早く終わったので、これで帰ります!
上司
そうか、じゃあこの仕事もやっておいて。これが終わったら帰っていいよ。
部下
え?でもうちの会社、裁量労働制ですよね…。
上司
…まあ別に帰るのは構わないけど、査定には響くことは考慮しておいてね。
部下
…わかりました、この仕事を終えたら帰ります…。

※”査定”とは昇給・降給を決めることを指します。

 

これ、普通にパワハラなのですが(^▽^;)、日本ではこういうやり取りは日常的に存在しています。

査定を使った、いわば“脅し”とも取れますね。

 

っていうか、8時間で出来る仕事を4時間でやったことへの評価はなく、「まだ4時間仕事できるじゃん」と逆に仕事を増やすという、もはや労働者側に”裁量”がありません…。

つまり、裁量が与えられているのは労働者(会社員)ではなく、使用者(企業)ということになります。

裁量労働制なので、本来上司が指示できること自体がおかしいのですが、日本の多くの企業ではこれがまかり通ります。

 

恐らくこの上司は、今後この部下にもっと仕事を振っていく事になるでしょう…。(仕事時間余るくらいだから、もっと仕事振らなくちゃ…と)

年功序列が活きていた時代はこれも通用しましたが(上司に気に入られて出世しやすいなど)、現代のように年功序列が破綻していて、会社もいつ倒産するかわからない状況では、“ただ単純に仕事が増えるだけ”です。

 

仕事量を2倍こなしても、賃金は2倍にはなりません。

つまり自分の仕事単価が、どんどん下がることになります。

サラリーマンであれば、じわじわと”降給”しているのと同じことになりますね(^_^;)

 

自分も上記のような経験があり、仕事を効率良く終わらせたことへの評価があるどころか、逆に仕事がどんどん増えていき、でも賃金は変わらない、という”負の連鎖”に陥っていました。

つまりは「仕事を早く終わらせれば終わらせるほど、”損をする”」ということになります。

 

こうなると裁量労働制としては破綻していて、本来なら4時間で終わる仕事なのに、”それ以上余計な仕事を増やさないために”、無駄にゆっくり時間をかけて仕事をするという、“生産性の低下”が起きます。

これは本当にもったいなくて、労働者(会社員)にも使用者(企業)にも無駄が発生します。

何気にこの生産性の低下が、現在の日本の経済力低下に繋がっているようにも思います。

 

若い世代はこの事をよく理解していて、自分から発言・提案をして、無駄に自分の仕事を増やすようなことをしません…。(仕事が増えても給料が増えないことを知っているので)

 

自分が個人事業主になった理由は色々ありますが、この”生産性の低下”が嫌で個人事業主になった側面もあります。

人生の大事な時間を、「無駄とわかっている時間に使う」なんて、自分は納得がいきませんからね。

 

裁量労働制は過労死認定が困難

裁量労働制の場合、あらかじめみなし時間(例えば8時間)が決まっているので、タイムカード等で労働時間の記録を取っていないことが多々あります。

そうなると、もし長時間労働で過労死したとしても、それが「長時間労働で過労死したかどうか」を立証するのが難しくなる可能性があります。

 

もし今現在勤めている会社が裁量労働制の場合、何かの時に長時間労働を立証できように”証拠”を集めておくことが大事だと思います。

タイムカードがなければ、手書きでノートに出勤退勤を記述する、または出勤退勤専用ブログを作っておくのもいいかもしれません。

自分もゲーム制作会社を辞める前には、過去1年分のタイムカードのコピーをもらいました。(その時代はデジタルタイムカードではなく、まだアナログ打刻のタイムカードだった)

 

また、2017年に話題になりましたが、「違法残業をさせ労働基準法違反をした『電通』の罰金が、たったの50万円」からもわかるように、企業が違法残業をさせ労働基準法違反をしたとしても、その罰金額は微々たるものです。

この程度の罰金額であれば、企業は喜んで罰金を払い、『定額働かせ放題』を実施することでしょう。

なぜならその方がコストパフォーマンスが高いからです。(訴えられて罰金を払うよりも、残業代を支払わずに従業員をこき使う方がお得

 

 

今後裁量労働制の適用範囲が広がると…

今後裁量労働制の適用範囲が広がると…

現行の法案で、もし裁量労働制の適用範囲が広がった場合、以下の“更にヤバイこと”が起きる可能性があります。(あくまでも可能性ですが…)

 

最低賃金労働者・非正規労働者でも裁量労働制が適用される可能性がある

現在国会で議論されている裁量労働制の適用要件には、契約形態、年収要件がありません。(2018年2月現在)

つまり、裁量労働制が拡大解釈された場合、最低賃金で働く労働者や、パートや契約社員などの非正規労働者でも、法的には裁量労働制が適用される可能性があることになります。

業態・業種にもよりますが、時間給で割りだせない仕事(クリエイティブな仕事など)のアルバイト、契約社員でも“無限労働”が合法になる可能性があります…。

 

法的に認められるようになると、これを強固な武器にして「従業員をこき使うだけ使って、残業代は0円」という超絶ブラック企業も数多く出てくることでしょう。

裁量労働制を拡大して喜ぶのは、従業員ではなく、超絶ブラック企業かもしれません…。

 

今までグレーな働かせ方だった裁量労働制が、今度は「法で認められた裁量労働制(完全体)」となり、『定額働かせ死なせ放題』になるかもしれませんね。

18号を吸収した完全体セルよりもたちが悪そうです。(←意味不明w)

 

 

裁量労働制の経験談とそのヤバさのまとめ

ということで、今回は自分の経験談と、裁量労働制のヤバさを考察してみました。

 

正直、自分の経験からすると、裁量労働制は『現代版の奴隷制度』といっても過言ではないと思っています。

 

裁量労働制が拡大解釈されて長時間労働が”法的に”認められてしまったら、自分が危惧しているように「過労死するサラリーマンが続出する」ようにも思います。

これは命に関わる重要なことです。

国会ではそのことについて十分に理解し議論してもらいたいものです。

 

そして、現行のまま裁量労働制の拡大を行っても『定額働かせ放題』を拡大させるだけでしょう。

もし裁量労働制の適用範囲拡大を行うならば、しっかりとした法令整備(対象者の明確化、企業への多額の罰金措置、労基署への報告の簡易化…など)が必要といえそうです。

 

もしかしたら今後、『定額働かせ放題』の裁量労働制に嫌気がさして、個人事業主になる人が増えるかもしれないですね。

…? もしかして政府の狙いはそこなのか!?(^-^;)

最後までお付き合いありがとうございました。


スポンサードリンク

2 件のコメント

  • デスマーチON裁量労働制を4回ほど経験した元会社員です。

    最初のデスマーチ(十数年前)では「いつものように」深夜に家路に急いでいたところ、突然動悸が激しくなって倒れこみ、動けなくなりました。何とかカプセルホテルに転がり込んでやり過ごしましたが、今覚えば何を考えていたのかわかりませんが、次の日普通に出社して残業したのを覚えています。

    私の場合残業時間が「ある一定量」を超えるとなぜか口の中で「血の味」がしてくるので、度重なるデスマーチの教訓から、その状態になると非難轟々の中、定時退社を強行するようにしていました。

    自殺は全く考えませんでしたがよく過労死しなかったなと我ながら感心します。

    • 嵐山さん、いつもコメントありがとうございます!

      わーっ!裁量労働制、4回ですか!しかもデスマーチ…(^▽^;) す、凄いですね!!

      嵐山さんも危なかったですね。
      多分それ以上になっていたら過労死していたかもしれないですよね。

      自分もそういえば血便や血尿が出ていたのを思い出しました。。

      なんか長時間労働すると、本当感覚が麻痺して、今までやっていた日常業務をやろうと体や脳が動いちゃうんですよね。。

      この状態って昔TV番組で見たことがありますが、『大嵐に巻き込まれ、沈没するかもしれない状況の船員は、極限ストレス状態になると、つい日常業務をやってしまう』という心理状態になるそうです。(恐らくタイタニック号などでもしかり…)

      つまり、人間は高ストレス状況に追い込まれると、ストレスを回避するために脳からの信号をシャットアウトするようなんです。だから日常業務を普通にやってしまうという…。
      この状況にハマると、過労死に突き進む可能性が高いと思われます。

      本当、何でも”程々”が一番ですね。
      死んだら頑張って働いていたこと自体も無駄になっちゃいますからね…。

      裁量労働制、現状の日本では本当に危険な制度だと思います。

      裁量労働制で働きたかったら、個人事業主になるのが一番良いように思っています。

      安定した収入はないですが、確実に”裁量”はありますからね(^-^;)

  • コメントを残す

    ABOUTこの記事をかいた人

    アバター画像

    1976年生まれの二児の父。タイ料理カフェ『カフェガパオ』のオーナー。料理担当。3DCG、Webデザイン、ネットショップなどを経験しつつ、現在は飲食業を主軸に多角度的活躍を狙う、自称「ハイパー飯屋クリエイター」。現在は「自宅飲食店開業の専門家」としても活動中。SF映画が好きで特にアメコミ系と時間軸系が好物。100mの至近距離でUFOを見たことがある。